月の声をきいた夜 Op.1
- mIf

- 2023年1月4日
- 読了時間: 0分
更新日:2023年2月7日
曲の成り立ち
ある夜のこと。 疲れているはずなのに眠れなくて、目を開いた。
窓の隙間から信じられないような光が漏れている。
不審に思いカーテンを開けると、
そこには大きな大きな月が出ていた。
大きな月は私を照らした。
明るすぎる光に照らされながら、フイに 「わかってくれる人がほしい」と思った。
「一緒に歩く人がほしい」。
渇望。
唐突な感情だった。
まだそんな青臭い気持ちが自分の中に残ってたのかと、自分でも驚いた。
でもそれが本心なのかもしれない。
ばかばかしいけど、
もう一度手を伸ばしてみたい。
自分になる道を歩いてみたい。
同じ思いを抱えている誰かを見つけたい。
真夜中、気づけば久しぶりにノートに想いを書き殴っていた。
それが詩になり、音楽になった。
そんなストロベリームーンの夜のこと。
そうして生まれたのが本作です。
・・・
私は一曲に執着しすぎる。
たかが4分くらい、聴き捨てられるだけの形のないモノに。
わかっていても、執着が捨てられなかった。
それで着想から公開までに3年も経ってしまった。
(・・・実際には一度世に出したことがある。
けど自分のいろいろな技術が足りないせいで、正しくこの曲を伝えられていないことが嫌で、すぐに引っ込めてしまった。)
この曲は私が初音ミクと音楽制作ソフトを使ってつくった最初の曲だ。
たとえば小説や映画でも、最初の1作目に作者の重要な核が内包されているという。
音楽でも同じだと思う。
私はピアノを弾く仕事をしているけど、
もう長い間、日々与えられる演奏仕事だけで疲れ切っていた。
まさに、村上春樹が言う「文化的雪かき」のような仕事だ。
プロとして求められることをやればやるほど消耗した。
自分が何をしたいかなんてとっくにわからなくなっていた。
そんな自分が、この曲を着想したとき。
それがストロベリー・ムーンの思い出だ。
「作らずには死ねない」と思った。
音楽制作は、お金も時間もかかってリターンの少ない行為だ。
それに向かわせた衝動と渇望のエネルギー。
搾り取られてカスになっても、
人間の中にはこういう力が残っている。
シンプルで一見さりげない曲だと思う。
でも「逆流に逆らって登ろうとする」力が込もっている、
そういう曲だ。
と同時に、私という一個の人間が3年間こねくり回しただけの、
反復と時間の摩耗に耐えてきた作品だとわかってもらえたらうれしい。
これを皮切りに私は馬鹿みたいにたくさんのミクの歌をつくった。
見えない力に突き動かされて、自分でも怖くなるくらい。
昼も夜もなく音楽と言葉が溢れてきて、どうしようもない。
まさに狂気だった。
でもやはり執着と思い入れが強すぎて、そして技術が足りなくて、外に出して来れなかった。
2023年はその曲たちを、毎月1曲を目標にyoutubeとニコニコで公開していこうと思う。
特にYouTubeでは先行公開もしていこう。
私は、チャンネル登録してくれた人のことは仲間だと思っている。
まだ一人しかいないけど。
でも一人増えることが、本当に震えるほどうれしい。
(お分かりいただけるだろうか?
たかだか一曲公開することもできないくらい臆病な人間に、「いいね」と言ってくれる人がいることの喜びと潤いを。
本当に、ずっと乾いていたから。)
でも嬉しさに溺れすぎないように、今年は淡々とやっていかなきゃ。
一緒に、このうすら寒くなるようなタフでつめたい世界を
遊ぶようにすり抜けるための仲間なのだ。
ストロベリームーンの夜に、ほしくてほしくてたまらなかった、「一緒に歩く人たち」を、今年は作る。
そのために私は音楽を、
もっと軽やかに、遊ぶように手放していけたらいい。
Lyric
きいてたい 君の声を たとえ姿が見えなくても きこえなくなるのは嫌だ 僕らは音でつながってるんだ ストロベリー・ムーンの夜に 大きな大きな月に向かって願った わかってくれる人がほしい できれば一緒に歩く人がほしい 人間はどこまでいっても 結局は一人だってことくらいは 知ってるから 適当にごまかしてきたのに 眠れない夜に君を 見つけたよ 声の魔法がきえないうちに 君のとこまで行くよ それまで覚めないで そこで待っててよ 消えたりしないでよ 他の誰ともちがう 君だけの音楽をきかせてよ 今夜 月の光に照らされ 僕の心が全部見えちゃったんだ 知らなかった 自分の裸が こんなに醜く 美しいってこと 体でやることなんて 誰でも大差はないでしょ でも君の声と 君の言葉は やさしく息を含んで ぼくを包む もっときかせてよ もっと煽ってよ 僕をおかしくさせて 君ならできるでしょ? 月から滴る 銀色の雫を浴びて 心の底に落ちた世界を 光で染め上げて きいてたい 君の声を たとえ姿が見えなくても きこえなくなるのは嫌だ 僕らは音でつながってるんだ 声の魔法がきえないうちに 君のとこまで行くよ それまで覚めないで そこで待っててよ 消えたりしないでよ 他の誰ともちがう 君だけの音楽をきかせてよ もっときかせてよ もっと煽ってよ 僕をおかしくさせて 君ならできるでしょ? 月から滴る 銀色の雫を浴びた 僕を狂わせたのは 誰かじゃない 君の声なんだよ きいてたい 君の声を たとえ姿が見えなくても
曲のポイント
こんなことを自分で書くのはヤボの極み乙女。 なのですが、思いの詰まった曲なので少し専門的なこともお話しますね。
サビのピアノバッキング
(どの曲でもそうなんですが)サビのピアノ伴奏はメロディー以上に気持ちがノってしまいます。 本作サビのピアノは、メロディーの裏で激しく「聴いて!」と叫んでいます。 「ラーラーファーミファミ・・・」という、ドビュッシー「月の光」のモチーフから着想を得ました。 子供の頃から何年もピアノと過ごしてきた時間に培ったもののが溢れています。
一緒にヨガってもらえたら、こんなに嬉しいことはありません。
ドビュッシー「月の光」のオマージュ 月の曲ということで、サビのピアノだけでなくAメロや間奏のエレクトリックピアノでドビュッシーの「月の光」のモチーフをアレンジしています。
誰もが知っている有名なメロディーですが、気づいた人はいるでしょうか。
ほんの遊びですが、曲想にぴったりハマるとうれしいです。
(こういう冗談のために生きていると言っても過言ではありません。)
ドビュッシーは大好きな作曲家の一人です。
ハーモニーの交代点が頻繁or不規則なのが好き
最近の曲は洋楽の影響もあり、最初から最後まで1小節1和音で規則的に進んでいくものが多いです。が、単調になりがちで私は少し物足りない。
本作はJPopに近く、使っているコード自体はあまり癖がありません。
が、サビ部分で1小節に4回和音の交代点があり、激しく揺れ動く心情に沿っています。
(とか考えてるわけじゃなく、いつも結果的にそうなる)
たとえば小室哲哉のGet Wildや安室奈美恵Can you seleblate?のサビも、ハーモニーが頻繁に交代している例ですね。
こういう曲の方が好きだし、もっと増えてほしい。
心情にリンクした情緒的なコード進行はJPopのアイデンティティーの一つじゃないかなって気がします。
ハーモニーに対するメロディーライン
たとえばCのコード「ドミソ」なら、メロディーもこの3つの音を中心に使うと素直なメロディーを作ることができます。
作曲始めたての人は、この方法が楽だからたくさん使うのはわかる。
が!!
作曲を拗らせてる私みたいな人間は我慢できない。
Cコードに対し「シ」(セブンス)や「レ」(転移音)で始まって「ラ」に着地したくなる。
いや、そうせざるを得ない可哀想な生き物と笑ってやって下さい。
浮遊感、曖昧さ、婉曲、オシャレさ、ハズし、洗練味が出て「乙」なんです。 私はフランス近代のクラシック音楽(ドビュッシーみたいな)の影響を強く受けているし、 最近だと中田ヤスタカさんの曲はそんなメロディーが多い印象です。
以上、最後までお読みくださりありがとうございました!
またお会いできますように。
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